リバーロキサバン内服中の転倒外傷により急性頸髄硬膜外血腫を生じた1例(Traumatic acute spinal epidural hematoma in a patient on rivaroxaban therapy)

Abstract

要旨 高齢化に伴う心房細動の増加 1)により広く抗凝固療法が行われるようになった。リバーロキサバン（Rx）はXa因子を阻害し凝固を阻害する。症例は76歳の男性で，階段から転落し搬送された。搬入時から後頸部痛を訴え，著明な線溶亢進，頭部・体幹造影CTで右腸骨骨折を認めた。受傷約11時間後に片麻痺が出現し，頸髄MRI検査で急性頸髄硬膜外血腫を認め，緊急血腫除去術を施行した。急性頸髄硬膜外血腫は静脈叢の破綻により血腫を形成すると考えられている。本症例では搬入時から外傷に起因する凝固障害（ATC）を合併していたため，ATCとRxの相互作用により急性頸髄硬膜外血腫を形成したと考えられた。手術に際しては，すでにRxの半減期は過ぎていたため新鮮凍結血漿（FFP）は投与しなかった。近年，Rx血中濃度とプロトロンビン時間（PT%）は相関することが報告されている。来院時からPT%が延長し，ATCを合併する症例ではFFPの投与や，神経症状の出現時には速やかに頸髄MRIを施行すべきである。また，本症例のように止血まで長時間かかることが予想される症例では通常よりも長い時間，厳重な経過観察が必要である。