Material Flow/Stock Analysis of Lead in Japan

Abstract

1．緒 言 本稿では我が国を対象とした鉛のマテリアルフロー・ストック を動的に分析 (Material Flow / Stock Analysis) することを目的とし ている。より具体的には，マテリアルバランス ( 投入フローと産 出フローの関係 ) を図化し，それを積み上げることにより鉛を用 途別に分類した 2007 年の In-use stock を推計し，さらに循環資源 量，廃棄物量を定量化する。なお本稿では In-use stock という用 語を用いるが，In-use stock 中の鉛量とは現在国内市場で使用さ れている製品に含まれている鉛量である。つまり使用済みとなっ た後，廃棄されずに退蔵されている製品中の鉛量は含まれておら ず，将来的に都市鉱山となり得る最大限の量を示すものであり， そのすべてが回収されるわけではない。また発生時間は製品寿命 に依存する。 我が国は高機能化が進む川下の製造業が中心となる経済環境で ありながら，最上流を支える資源確保は輸入に頼らざるを得ず， 非常に脆弱な構造の上に成り立っている。そのため，鉱物資源の 安定供給確保の実現は日本の産業界への安定成長の礎であると考 えられる 1) 。鉱物資源の安定供給には鉱山由来の天然資源から の供給と循環資源からの供給があるが，循環資源は国内市場に存 在する鉱物資源であるため， 輸入に起因するリスクを受けにくい。 そのため In-use stock を算出し，国内市場に存在する循環資源量 を定量化し，安定供給に関して評価することは今後の日本経済に とって非常に重要な研究であると言える。本稿ではその鉱物資源 の中でも鉛に注目した。 数多くある鉱物資源の中でも資源量豊富な鉛に敢えて着目した のは 2 つの理由がある。1 つ目は，鉛消費の大半を占める鉛蓄電 池においてリサイクルシステムが確立されているため，鉛製錬に 占めるリサイクル原料の比率が高くなっているおり，その需給は 安定的に思えるが，過去にリサイクル原料の輸出が市況に影響を 受け急増した際に，国内での原料確保に問題が生じた懸念があっ た。2 つ目は，鉛の急性毒性は強くないとは言え，慢性中毒を起 こす可能性があるため，廃棄物の物量を定量化し把握･管理する 必要があることが挙げられる。こうした事例を考えると，今後の 循環資源の安定的な確保，ひいては最終処分まで含めた安定的な 鉛の物質循環システムの構築が必要である。そのため本稿では動 学的なマテリアルフロー分析 2, 3) を行い， In-use stock を推計した。 2．マテリアルフロー及び In-use stock の推計手法 In-use stock を推計するために，マテリアルフロー分析と呼ば れる手法を用いる。 金属鉱物資源は， 鉱山から採掘され， 製錬業へ， さらに下流の製造業者へと渡り，最終消費者に届く。そして，消 費された後はリサイクルないしは最終処分される。マテリアルフ ロー分析とはそれらのライフサイクルを明確な地理的バウンダリ を設けつつ対象となるものの流れを把握し，評価・解析するもの である。 ここでフローの流れを明確にした概略図を Fig. 1 に示す。 鉛のマテリアルフローの推計にあたり，地理的なバウンダリ は日本国内に設定し，フローの作成には製品の重量や個数では なく鉛の純分量を用いた。鉛の加工段階に応じて原料製造 (Raw Material Production) ，素材製造 (Material Production) ，中間製品 1 2 3We conducted Material flow/stock analysis, in order to estimate not only the in-use stock, but also waste flows of lead in Japan. Material flow analysis (MFA) quantifies flows of materials into, out of a system boundary. In this paper, all lead flows are captured throughout its lifecycle; from Raw Material Production, Material Production, Interim Product Production, Final Product Production, Use, to Waste management including Recycling. There are two motivations why we focused on lead. The first is that when exports of lead old scraps rapidly increased in 2005, changes of lead old scraps exports affect domestic lead refineries. This incident suggests the importance of analyzing the scrap trade flows. The second is its toxicity. This means the importance of appropriate management of waste flows. Currently, 80% of lead is being used as lead-acid batteries. As a consequence of MFA, We find that the stock of in-use lead in Japan is about 1.58 million tonnes in 2007. The batteries for Four-wheel cars (34%) and other vehicles (19%) are biggest form of lead in-use stock, followed by the stock in construction (18%) .