重篤な喘息発作中に造影剤を使用せざるを得ず，吸入麻酔薬を使用して良好な経過を得た1例(A patient who could not but use contrast media during serious asthma attack, and obtained good course using inhalation anesthetic)

Abstract

要旨重篤な喘息発作中に造影剤を使用せざるを得ず，吸入麻酔薬を用いて良好な経過を得た1例を経験したので報告する。症例は喘息の既往がある83歳の女性。かかりつけの耳鼻科医院で処置後に突然呼吸苦を訴えて意識を失い，当センターに救急搬送された。来院時も意識障害は遷延していた。直ちに気管挿管を行ったが，呼吸音をほぼ聴取せず，用手換気に抵抗があった。重篤な喘息発作と診断し加療を開始した。頭部CTでは有意な所見はなかった。アドレナリンの筋肉注射を2回行ったが，呼吸音はわずかしか改善せず，気道抵抗は高いままであった。12誘導心電図で虚血性変化があり，心臓超音波検査では左室心尖部の壁運動低下を認め，急性冠症候群の併発も否定できず，やむを得ず緊急で冠動脈造影検査を行う方針とした。造影剤による喘息発作の増悪の可能性もあり，セボフルランの吸入下に検査を行った。セボフルランの使用後喘鳴は改善し，気道抵抗も低下した。冠動脈検査では有意病変はなく，たこつぼ型心筋症と診断した。ICU入室後はケタミンを用いた。発作の再発はなく，神経学的転機が良好で，3日目に抜管を行い，8日目に転院となった。