追加切除を要した壊死型虚血性直腸炎の1例(A case of necrotic ischemic colitis of the rectum which required additional resection)

Abstract

要旨虚血性大腸炎のうち，壊死型の頻度は約10%と少ないが，予後は悪いとされている。今回，壊死型虚血性直腸炎に対し，まずHartmann手術を，1週間後にMiles手術を施行し救命した1例を報告する。症例は80歳の女性。既往歴はパーキンソン病，心筋梗塞，高血圧症，便秘症であった。突然の腹痛と全身倦怠感が出現し様子をみていたが改善せず，救急車で当センターに搬送された。動脈血ガスでpH 7.221，HCO3– 10.7mmol/L，BE –18.4mmol/L，lactate 10.3mmol/Lと代謝性アシドーシスおよび血清乳酸値の上昇を認めた。さらに腹部造影CTで直腸の虚血性病変を認めたため，壊死型虚血性直腸炎と診断し発症12時間後に緊急手術を行った。術中所見として，上部直腸（Ra）の漿膜が暗赤色に変色していたが，腹膜翻転部の色調は正常であったため，Hartmann手術の方針とした。直腸S状部～上部直腸を切除し，S状結腸で単孔式人工肛門を造設した。術後経過は順調であったが，術後7日目に自然肛門より下血を認めた。下部消化管内視鏡にて残存直腸の広範囲に出血性潰瘍を認めた。内視鏡下止血は困難であったため，緊急でMiles手術を施行した。本症例は，発症12時間以内に初回手術ができたこと，さらには1週間後に追加手術を行ったことにより救命できたと考えられる。