成人期における関係性攻撃

Abstract

Dodge, 1994) 。この理論では，攻撃行動に至る認知プ ロセスを(a)手がかりの符号化， (b)解釈， (c)目 標設定， (d)反応構築， (e)反応決定といった 5 つの ステップとしてモデル化し，攻撃行動の原因を各ス テップにおけるバイアスと仮定する。例えば(b)の 解釈における問題は，曖昧な挑発状況において他者の 行動に敵意を見出す敵意的帰属バイアス(Hostile Attribution Bias)として概念化されている。 情報処理モデルが認知のプロセスに着目する理論で あるのに対し，認知の内容的側面に関する研究では， 攻撃行動と関連する認知のゆがみの内容に着目する。 Barriga & Gibbs(1996)によれば，攻撃を導く自己奉 仕的な認知のゆがみは 2 つの次元に分類される。一次 的な認知のゆがみ(cognitive distortion)は自己中心性 であり，道徳発達の未成熟さの反映と考えられる。二 次的な認知のゆがみは，一次的な認知のゆがみから生 じる情動的なストレス(罪悪感や恥)から自己イメー ジを守るために用いられる。例えば攻撃による被害を 実際より少なく見積もることなどが挙げられる。同様 に認知の内容に着目した理論として，道徳的不活性化 (Moral Disengagement