急性期脳梗塞に対するrt–PA投与後に急性心筋梗塞を発症した1症例(A case of acute myocardial infarction following intravenous recombinant tissue plasminogen activator therapy for acute ischemic stroke)

Abstract

要旨急性期脳梗塞に対するアルテプラーゼ（rt–PA）静注療法は，一般的な治療になりつつある。今回我々は，rt–PA静注療法を契機に急性心筋梗塞を発症した症例を経験した。症例は，とくに既往症のない72歳の女性。急性発症の構音障害と左片麻痺を呈して救急搬送され，頭部MRIで右側頭葉内側に急性期脳梗塞を認めた。発症後2時間30分でrt–PA静注療法を施行したところ，投与終了後2時間でうっ血性心不全，低酸素による心原性ショックに陥った。冠動脈造影検査を施行し，左前下行枝（#6）の閉塞を認め，ステントによる経皮的冠動脈形成術を施行した。経過よりrt–PA静注療法を契機に急性心筋梗塞を発症したと考えた。急性期脳梗塞に対するrt–PA静注療法後には，急性心筋梗塞を発症する可能性がある。発症頻度や機序は不明であるが，症例報告が散見され注意を要する病態である。