帯状疱疹治療中に意識障害を来し，脳炎との鑑別を要したアシクロビル脳症の1例(A case of acyclovir–induced encephalopathy demonstrating an impaired consciousness during treatment for herpes zoster which had to be differentiated from encephalitis)

Abstract

要旨 Valacyclovir（VACV）はAcyclovir（ACV）のプロドラッグであり，ACVの血中濃度が上昇しやすく，中毒症状について注意喚起されている。症例は85歳の女性。帯状疱疹に対しVACVを処方された。翌日から転倒を繰り返し，さらに意識障害を呈したため当院へ救急搬送された。来院時は軽度の意識障害が残存しており，かつ腎機能障害を認めた。VACV内服後に発症していることからACV腎症・脳症を疑った。腎機能障害が進行したため血液透析（hemodialysis: HD）を導入したところ，速やかに意識障害と腎機能障害のいずれも改善した。ACVはその特性からHDで除去しやすい。本邦におけるACV脳症の報告例のうち約半数でHDが行われていた。また，本症例を含め髄液中の細胞数が軽度上昇していた例は6例あった。髄膜脳炎とACV脳症では治療が全く異なるが，両者の鑑別は困難であり，鑑別目的にHDを行うことも選択肢となりうる。