地方の緊急PCI非実施施設における転院搬送のガイドライン未達成の実態(The actual situation of not achieving the ACS guidelines regarding hospital transfers and patient transportation at local facilities not conducting urgent PCI)

Abstract

要旨【目的】2019年3月に日本循環器学会から発行された急性冠症候群診療ガイドラインの中で，当地のような緊急PCI非実施地域においては再灌流治療までの時間の遅れを最小限にするため，病院到着から転院搬送開始までの時間（door–in door–out time: DIDO）を30分以内にするようにと推奨されているが，本邦におけるDIDO時間に関する報告はこれまでほとんどない。当地における現状を明らかにするため，後ろ向きコホート研究を行った。【対象】2016年4月～2020年3月に当院でSTEMIと診断され緊急転院搬送となった39症例（平均年齢70歳，男性34例）のDIDO時間を算出し検証した。【結果】DIDO時間の中央値は95分（45～193分）であった。DIDO≤30分は0例，DIDO≥91分が20例であった。患者背景別や状況別についてDIDO時間を比較したが，有意差は認めなかった。【結語】当地域ではSTEMIで転院搬送を要した患者に対して，新ガイドラインで推奨されている30分以内のDIDO時間が全く守られていないことが明らかとなった。今後のDIDO短縮には，院内における迅速な診断と医師応召だけでなく，病院前12誘導心電図システムの導入など，近隣医療機関や消防機関との相互協力が必要と考えられる。