初療室開胸およびその後の集学的治療で良好な転帰が得られた小児鈍的外傷の1例(The successful treatment of blunt pediatric trauma with emergency department thoracotomy and subsequent multidisciplinary therapy: a case report)

Abstract

要旨 緊張性血胸を来し初療室開胸を要したが，良好な転帰が得られた小児鈍的外傷症例を経験した。症例は5歳，男児。墜落により受傷し，脳挫傷および両側血気胸の診断で当センターに転院となった。来院直後に心停止に陥り，緊急両側開胸を行った。右胸腔内に大量の凝血塊が貯留しており，除去するとまもなく自己心拍再開が得られ，凝固血胸による緊張性血胸と判断した。ガーゼパッキングおよび仮閉胸を行い，肋間動脈の経皮的動脈塞栓術を開始した。塞栓術中に腹水が増加し，開腹止血術および仮閉腹の追加を要したが，肋間動脈は止血でき，循環動態の安定が得られた。塞栓術後の画像検索において硬膜下血腫が出現し，開頭血腫除去を追加した。一連の外科的治療後は，全身状態が安定し，閉胸・閉腹・頭蓋形成を順次行った。神経学的所見も徐々に改善が得られ，独歩通学が可能となった。小児鈍的外傷における心停止は初療室開胸の適応外とされるが，来院後の心停止で緊張性血胸によるものであれば，速やかな認知と凝血塊の除去によって，救命の可能性を見出しうると考えられた。