Surface Modification of Non-Woven Electrospun Fine Fiber Mats through Surface-Initiated Atom Transfer Radical Polymerization

Abstract

エステルであるポリブチレンテレフタレート (PBT) の電界紡糸繊維を，ポリスルホベタインブラシや フッ素系ポリマーブラシのグラフト化により改質し，濡れ性，水/油分離特性を評価した．フッ素系ポリ マーブラシを付与することで，微細径繊維不織布は Cassie-Baxter 状態となり超撥水性を示した．一方， ポリスルホベタインブラシを付与することで，微細径繊維不織布は超親水化し，湿潤状態で油分の透過 を抑制し，タンパク質の付着を抑制する効果を発現した．PBT 電界紡糸繊維では，融点付近まで表面改 質効果が保持され，優れた耐熱性を示した． 1 緒 言 樹脂成形加工技術の進展により，微細径繊維や微細形 状賦形フィルムを容易に調製することが可能になり，そ の微細構造に由来する物性の制御に基づく材料設計が注 目を集めている．とくに，濡れ性，接着性，摩擦特性な どの表面特性は，高分子材料の化学構造だけでなく，そ の表面形状に大きく依存するため，双方の相乗効果を考 慮した材料設計が必要不可欠である． 繊維径がナノメートルオーダーの微細径繊維であるナ ノファイバーは，高比表面積，不織布における微細空隙 などの特徴から，多岐にわたる分野での応用が期待され ている．繊維径がサブミクロン以下の微細径繊維不織布 を効率的に調製する手法として，高分子溶液，あるいは 高分子溶融体に高電圧を印加することで紡糸する電界紡 糸法が挙げられる 1),2) ．高分子溶液を吐出するノズルと コレクター間に高電圧を印加すると，帯電した高分子溶 液が静電引力によりコレクターに向けて噴射される．紡 糸される過程で溶媒が蒸発し，コレクターにサブミクロ ンサイズの微細径繊維不織布が得られる．常温，常圧 で，湿式紡糸が可能であり，溶液の粘度，電気伝導度， 誘電率，表面張力，ノズル/ターゲット間の電位，湿度 などのさまざまなパラメータにより多様な繊維形状，分 子鎖凝集状態の繊維からなる不織布を調製することがで きる 3) ． 微細径繊維不織布の表面特性を用途に合わせて最適化 するために，プラズマ処理などの親水化処理や添加剤の 導入など，実にさまざまな表面改質方法が用いられてい る 4) ．フッ素系高分子鎖を含むブロック共重合体や撥水 撥油性添加剤は，紡糸過程において自発的に繊維表面に 凝集することで繊維の撥水撥油性を向上させる 5) ．ま た，繊維表面に反応性置換基を導入し，機能性分子を縮 合反応により固定化することで繊維表面を改質すること も可能である 6) ．しかしながら，添加剤の混合は成形品 のバルク物性を損なうことが多く，成形品最表面層のみ の化学的変性による表面改質の場合，高分子鎖のマイグ レーションによる疎水性成分，低分子量成分などの表面 偏析や，添加剤の脱離による表面変性が問題となる．成 形品表面への高分子鎖のグラフト化は，成形品のバルク 特性を損なうことなく長期耐久性に優れた表面改質を実 現する．光開始ラジカル重合などによる高分子鎖の表面 グラフト化は表面改質に非常に有効である 7),8) ．しかし ながら，グラフト密度が低いために表面に導入される高 分子の膜厚が薄く，改質効果が十分に発揮されにくい問 題点もある．表面開始制御ラジカル重合により形成され るポリマーブラシは，均一に分子鎖が成長するためグラ フト密度が高く，均質で膜厚の厚いポリマーブラシ層を