海水浴場など,他地域から多くの人が訪れる観光地では,来訪者が周辺の地理情報に疎く,避難場所, 避難経路などの情報の周知も難しいと考えられる.そのため,沿岸部の観光地には,観光客を守るための 適切な避難誘導を行える力も持つことが求められる.そこで本研究では地元住民によって企画される避難 訓練が,どのように実施され改善が重ねられたか,観察と参加者へのアンケート調査の結果から検証した. 当初,考えられていた避難場所が経路,受入容量に問題があること,距離があって来訪者から不満がでる と思われた避難場所でも大きな問題なく避難出来ることなどが確認され,実践を通じた問題発見と解決策 を見い出すことができた. Key Words : tsunami evacuation drill, beach, practical study 1. はじめに 海水浴場など,他地域から多くの人が訪れる観光地で は,来訪者が周辺の地理情報に疎く,避難場所,避難経 路などの情報の周知も難しいと考えられる.また,多く の観光客が海辺に滞在する際に津波警報等が発表された 場合,避難場所への誘導が重要となる.そのため,沿岸 部の観光地には,観光客を守るための適切な避難誘導を 行える力を持つことも求められる. 今までにも沿岸部の観光地に求められる対応について 様々な指摘がなされている.特に,海水浴場に限っても いくつかの先行研究がある. 先駆的な研究としては,杉本らは 2006 年から 2010 年 にかけて計 5 カ所の海水浴場で行ったアンケート調査の 結果をまとめ,地元住民を主体とした防災対策から来訪 者を対象とした対策へ方向性を変えていく必要性を述べ ている 1) .吉田らは,海水浴客は荷物をまとめる,車 へ一度戻るなどの行動をとることを指摘し,迅速な避難 についての周知徹底が重要であると述べている 2) .安 田らは津波避難に対するサーファーの意識について全国 調査を行い,津波そのものへの知識や避難に対する意識 が必ずしも高いと言えないことから,津波防災教育の必 要性を課題として述べている 3) . 避難訓練についての論文としては,照本は 2013 年に 行われた観光客を対象とした津波避難訓練について分析 し,情報伝達,避難誘導,避難経路,避難場所について 来訪者へ分かりやすく表示することが重要であると述べ ている 4) .森田らは GPS ロガーによって避難訓練時の 行動分析を行っている.アンケート調査を併用すること で,初動の遅さや,避難経路の物理的キャパシティにつ いての考察を行っている 5) .島田らは海水浴場での避 難訓練で得られたデータを援用してシミュレーションモ デルを構築し,避難成功率の推計結果から避難誘導標識 の重要性について指摘している 6) . 以上の通り,海水浴場における避難に関する先行研究 は存在し,課題の抽出等がなされている.しかしながら, 調査や避難訓練を通じて見い出された問題解決に向けて 地域が継続的に取り組んでいる活動内容を追跡調査し,